またキミに会うために~1400年の時を超えて~
「どう致す?」

 皇子の横顔が、淡いオレンジ色に染まる。

 __通り過ぎるか、立ち止まるか。

 涙が溢れ出しそうになる程に、未来を想っている。だけど同時に、この瞬間を大切に思う私がいる。

 いつかは、帰りたい。だけどそれは、今じゃない。じゃあいつなのか。と、聞かれても答えられない。

「……いい」

 小さく首を振ると皇子は「そうか」と、呟くだけだった。だから私も、話題を変える。

「そういえば、どこの温泉に行くの?」

「ムロだ」

「え、牟婁!?」

「知っておるのか?」

「うん。和歌山……。紀伊国で、有名だよ! 未来でも」

 __白浜温泉。

 一度家族旅行で行ったことがある。

「ここから、どれぐらいかかる?」

「休憩を考えると、ニ日ぐらいだと思うが」

「な!?」

 開いた口が塞がらない。
 だって家族旅行の時は、ここから車で一時間程で辿り着いた。なのに約ニ日かかるなんて、文明の利器の驚異を改めて知る。
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