またキミに会うために~1400年の時を超えて~
 皇子は気づいていた。赤兄さんが訪ねてきたその時から、中大兄皇子が動き出したということに。

 大王の地位を狙っていなくとも患っていようとも、皇子の存在を邪魔にしている中大兄皇子が簡単に見逃してくれるわけがない。そして政治の実権を握っている中大兄皇子に成す術はない。

 __できることはただ一つ。
 __斉明大王に賭ける他ない。

 なんて悲しいんだろう。皇子は何もしてないのに疎まれている。未来を平々凡々と生きてきた私には、この時代の考え方も皇子の気持ちもわかるはずない。こんなに近くにいるのに、私は何も気づけなかった。

「……隣にいることしかできなくてごめんね」

 言葉の通り、ただ側にいることしかできない自分に嫌気がさす。
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