私のボディーガード君
「ねぇ、三田村君、私、昨夜、迷惑かけた?」

ダイニングテーブルに三田村君と向かい合って座り、フレンチトーストを食べ始めたタイミングで聞いた。

紺色のマグカップを置いた三田村君がこっちを見る。

「覚えてないんですか?」
「新年会でお酒を飲んで、若林さんに送ってもらって、それから三田村君にお姫様抱っこしてもらって……」

わぁ! 私、三田村君にお姫様抱っこで部屋まで連れて行ってもらったんだ!
きゃー。恥ずかしい。

顔が熱くなってくる。

「ごんめなさい。私、抱っこしてって、強請ったんだよね?」
「その後は?」
「その後……」

部屋まで送ってもらって、ベッドに寝かせてもらって……。

ダメだ。思い出せない。

「覚えておりません。良かったら聞かせて頂けないでしょうか?」

おどおどと三田村君を見ると、呆れたようなため息をついた。

「妃奈子さんって、酒癖悪いですよね。記憶が無くなるまで飲むのはどうかと思います。つき合う方の身にもなって下さい」

トンっと大きな手が叱るようにダイニングテーブルを叩いた。

もしや、三田村君、怒ってる?

「まあ、でも、これだけは言っておきますが」
「はい」

背筋をピンとして聞く。

「妃奈子さんの警護、俺は少しも負担に思っていませんから。昨夜、気にされていたようなので」

こっちを見た三田村君の目が優しく微笑んだ。

嬉しくて頬が緩む。

ああ、良かった。三田村君の傍にいていいんだ。
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