私のボディーガード君

変化

二月は大学の講義がなかったけど、博物館で配る源氏物語のパンフレットの執筆や念願だった源氏物語の現代語訳の仕事が始まって忙しかった。

気づけばもう三月。
三田村君と同居して三ヶ月目に入った。

表向きは何の問題もなく三田村君と生活をしていたけど、今、困った状況に陥っている。

「は? 触りたくなる?」
私の話を聞いた友美が大げさに眉をあげた。

ここは大学近くにある友美のカフェ。
カウンター席でコーヒーを飲みながら悩みを打ち明けた所。

「そんなに大きな声で言わないでよ。聞こえるでしょ?」

カウンター席から離れたテーブル席に黒いパンツスーツ姿の若林さんが座り、時折、私の様子を伺うように鋭い視線を向けてくる。今日の警護は若林さんだった。

「あ、ごめん」
友美が若林さんの方に視線を向けながら謝った。

「それにしても驚いた。男性アレルギーのひながボディーガード君に触りたくなるなんて」

友美が普通の声の大きさで口にする。
もう。若林さんに聞かれたくないのに。

「しー! 声のボリューム!」
「あ、ごめん。でも、どうして触りたくなるの?」

どうして……。
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