私のボディーガード君
自分でもよくわからない。三田村君を見ると触れたくなる。抱き着いて、いい匂いがする首筋に鼻を埋めたくなる。

男性にこんな欲求を持つのは初めてで、戸惑っている。

「友美、私、頭がおかしくなったのかな。時々、三田村君()が光源氏にも見えてくるし、抱き着きたくもなるの」

カウンターの向かい側に立つ友美がクスッと笑った。

「それってさ、単純に好きって事じゃないの?」
「好き?」
「つまり、恋しているって事よ。恋をすると好きな人に触れたくなるのは普通の事だよ。今までなかったの?」

光源氏に触れてみたいと思った事はあるけれど、実際の人間に対して思った事は一度もない。

「光源氏以外、なかった」
「ほおー、彼はひなが恋焦がれた光源氏と並ぶ存在になったんだ」

恋焦がれた存在……。

三田村君が?

えー!

頭の中がパニック。

ど、ど、どうしよう……。
今日からどんな顔して三田村君と暮らせばいいの?

おろおろしていると、カランコロンとベルが鳴る。

入って来たのは浅羽だった。
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