私のボディーガード君
「それで犯人を知っているってどういう事?」

眉を寄せた浅羽の表情が険しくなる。

「妃奈子さん、倉田浩介(くらたこうすけ)って名前に聞き覚えはある?」

――倉田浩介……。

「さあ。知らないけど」
「そうか」
「犯人の名前なの?」
「記者に聞いた話だと、倉田浩介という男が22年前に妃奈子さんを誘拐した男らしい。そして今回もその男が関わっていると」

心臓がトクンと脈打つ。

誘拐……。

倉田浩介……。

――佐伯妃奈子ちゃん?

男の声が頭の中で再生され、吐き気がこみ上がってくる。

「ごめん、ちょっと」

席を立って慌てて、トイレに駆け込んだ。

「佐伯先生、大丈夫ですか?」

若林さんが個室のドアをトントン叩く。

涙が溢れて答えられない。

怖い……。

怖くて堪らない。

助けて、三田村君。
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