私のボディーガード君
「キノコのあんかけ、美味しくなかったですか?」
三田村君の問いかけにハッとする。

「……美味しいよ。でも、食欲がなくて。残してごめんなさい」
「謝らないで下さい。妃奈子さんは悪くないですから。妃奈子さんの体調を考慮するべきでした。朝からちょっと多かったですよね」

優しい言葉が今朝は苦しい。
倉田浩介の事を聞いたら、三田村君は答えくれるだろうか、それとも……。

「あのね、三田村君」
「はい」
箸を置いた三田村君がこっちを見る。

倉田浩介の事を私に隠すのはどうして?

そう聞きたいけど、怖い。

三田村君が倉田浩介なんて知らないと否定をしたら、ハッキリと私に隠し事ができる人だとわかってしまう。

嫌だ。知りたくない。三田村君の汚い所は見たくない。
優しい三田村君だけを知っていたい。

「妃奈子さん、どうしました? 眉間に深い皺を作って」
「ううん。何でもない。ごちそうさま」

逃げるように二階の自分の部屋に駆け込んだ。
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