私のボディーガード君
3日ぶりに三田村君と暮らす家に帰って来た。
実家よりも我が家って感じがする。

三田村君がコーヒーを淹れてくれると言った。
ダイニングテーブル前に腰を下ろして三田村君を観察する。上着を脱いで、ワイシャツ姿になった三田村君がキッチンを動き回る。

三田村君が手に取った桜色のマグカップと、抹茶色のマグカップを見て、笑みが浮かんだ。三田村君と暮らし始めた時に雑貨屋さんで二人で選んだ物だ。桜餅みたいな色合いがいいって、お店で三田村君が言っていた。

あの時は三田村君とやっていけるのかと、不安だったけど、今は全然不安じゃない。それ所か、三田村君と離れている事の方が苦しい。

いつの間にか三田村君は私にとって、かけがえのない人になっている。
だから、この生活が終わる日を思うと、寂しい。

ずっと三田村君と暮らせたらどんなにいいんだろう。
そう思うと、座っているのがもったいない気がして、傍まで行って、湧いたばかりのお湯でコーヒーをドリップする三田村君を見た。

「待ちきれないんですか?」

コーヒーに視線を向けながら三田村君が訊いた。

「うん。待ちきれないの」

ニコニコと笑顔を浮かべて答えた。
クスッと笑った低い声が胸に沁み込む。

三田村君の傍はいつだって居心地がいい。

「はい。妃奈子さんの分」

桜色のマグカップを三田村がくれた。中には淹れたばかりのコーヒーが入っている。香ばしい匂いにほっとする。三田村君が淹れたコーヒーは自分で淹れた時よりも100倍美味しく感じるから不思議。

リビングのソファに三田村君と並んで座った。

「妃奈子さん、おかえりなさい」
改めて言われるとくすぐったいけど、嬉しい。
おかえりなさいって言ってくれる人がいるのはありがたい事だなって、つくづく思う。

「ただいま、三田村君」
三田村君と顔を見合わせて微笑んだ。
幸せな気持ちが胸いっぱいに広がる。

「ところで妃奈子さん、まだ俺に聞きたい事があるんじゃないんですか?」

三田村君のコーヒーを味わっていたら、そんな言葉が降って来た。
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