私のボディーガード君
「妃奈子さん、僕が倉田浩介の息子だって気づいたのはどうして?」
「それは倉田浩介の顔を思い出したから」
「僕はやっぱり父に似ているのかな?」

眼鏡を外した浅羽が真剣な顔でこっちを見た。

「よく似てると思う。こうしてあなたを見ていると、倉田浩介が目の前にいると思えるぐらい」

眼鏡を外した顔はより一層、倉田浩介に似ている。
手の中の眼鏡に視線を落としながら、浅羽は「僕はそんなに似ているのか」と呟き、「これは変装用の伊達眼鏡なんだ」と笑った。

それから鋭い切れ長の目をこちらに向けられゾクッとした。22年前、私をさらった倉田浩介も同じ表情で私を見ていた。

「同じ事を父の知り合いにも言われたよ。もう二年前になるかな。仕事で神宮寺製薬に関わる事になって、その時に父の知り合いに声をかけられてね。今思うと、それが全ての始まりだった」

ハッと息をついた浅羽が、テーブルに眼鏡を置き、遠い目をした。
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