私のボディーガード君
「僕は隠蔽した人間が父を殺したと思っている。父の罪を隠す事でチャイルドの事も隠そうとしたんだろう」

鋭い視線が向けられた。

「母だと言いたいんでしょうけど、私は違うと思う」
「なんでそう思うんだい?」
「娘としての勘よ!」
「勘?」

浅羽が目を見開き、笑い出した。

「勘か。妃奈子さん、面白いな」
「勘もバカにできないのよ」

三田村君が浅羽に近づくなと言った時、勘だと言われて呆れたけど、三田村君の勘は正しかったんだと今は思う。直観的にわかる事だってある。私はどうしても母が倉田を殺すように手を下したとは思えない。当時の母にそんな力はなかったはず。

「それにあなたの言っている事は全部臆測じゃない。倉田浩介は自分の意志で自殺した可能性だってある」

「それを言われたら痛いな。でも、父は自分の身が危ないと思っていたようだったよ。自分が死んだ時はチャイルドの事を世間に公表して欲しいと、母に手帳とチャイルドの資料を送って来たからね。父の思惑と違ったのはそれを母が大金と引き換えに神宮寺製薬に渡してしまった事だ。そして母は父の事を忘れたように暮らした」

フッと笑ったコーヒー色の瞳が寂しそうに見えた。
< 188 / 210 >

この作品をシェア

pagetop