私のボディーガード君
それから母は浅羽からの脅迫状を受け取り、チャイルドの副作用を公表するべきだと、神宮寺製薬に迫っていた事を打ち明けた。

神宮寺製薬側は5年前にチャイルドが発売中止になっている事から、今さら副作用を公表する必要はないと母の意見を退けたそう。

政界にも大きな影響力を持つ神宮寺製薬を敵に回さないようにする為、母はギリギリの所で交渉していたらしいが、神宮寺製薬に対して強い態度に出られなかった母が情けなかった。

私に全ての経緯を話したあと、母は記者会見を開き、神宮寺製薬が行ったチャイルドの隠蔽と、拘置所内での倉田浩介の不審な死について語った。

母は会見の最後にチャイルドの被害者の方々にお詫びしますと、深々と頭を下げて議員辞職した。

母の会見は倉田浩介と浅羽の目的を果たすものだったけど、会見を見ていて悔しくて仕方なかった。

母の会見が22年前に開かれていたら、チャイルドはもっと早く発売中止になり、多くの子どもたちを死なせる事はなかったかもしれない。

被害者や、そのご家族の事を思うと胸が張り裂けそうだった。

会見は大々的に報じられ、チャイルドの被害は多くの人たちに知られ、神宮寺製薬の株価は世間の声を反映すように半値以下まで下がった。

社長の神宮寺昭は責任を取って辞任し、警察は神宮寺昭を始めとするチャイルドの隠蔽に関わった社員や、厚労省の官僚を逮捕した。

倉田浩介の無念はこれで晴れたかもしれないが、幼い被害者たちの事を思うと、後味の悪い想いは消えなかった。
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