私のボディーガード君
事件の後、浅羽からの手紙を受け取った。

手紙の中で浅羽はチャイドルで子どもを亡くした親御さんたちの声を聞いて、見過ごせなくなったと語っていた。浅羽に協力した髭男も実はチャイルドのせいでお子さんを亡くしていたらしい。

『僕は弱い者の声を届けたかった。しかし、妃奈子さんに二度も怖い思いをさせた事は間違っていたと今は思う。

実は末期の胃がんを患っていて、僕には時間がなかった。生きている内に何とか神宮寺製薬の悪事を世間に知らせたかった。それには佐伯大臣の口から語ってもらうのが一番だと思い、乱暴な方法を取ってしまった。

本当に申し訳なかった。
あの世でも妃奈子さんに謝り続けるよ。 浅羽光平』

手紙を届けてくれたのは浅羽の弁護士だった。弁護士から浅羽が今朝亡くなった事を聞いて、やりきれない想いでいっぱいになった。

ポタポタと便箋に涙の雫が落ちた。

怖い思いをさせられたけど、浅羽の死が悲しい。

浅羽が最初からチャイルドの事を打ち明けてくれたら、神宮寺製薬の悪事を表に出す事に協力したのに。私から直接、母に訴える事もできたのに。

なんで言ってくれなかったの。

なんで……。
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