私のボディーガード君
やり切れない想いを抱えたまま日々は過ぎ、事件から一ヶ月以上が過ぎた。
気づけば明日からゴールデンウイークを迎える。

三田村君とは浅羽のログハウスで会って以来、顔を合わせていない。

事件直後に無事を知らせる連絡を三田村君からもらい、そのメッセージの中にあった『ボディーガードはこれで終わりです』という言葉を見て、三田村君の仕事が終わった事がわかった。

仕事が終わった後も三田村君は一緒に暮らす家に帰って来ると思っていた。でも、三田村君は帰って来なかった。

冷静に考えてみれば、もう私を守る必要もないのだから、同居生活が終わるのは当然の事だった。

母が議員辞職したので、三田村君も秘書を辞めたらしい。

完全に三田村君との接点がなくなり、三田村君から連絡がくる事もなかった。

はあ、と、盛大なため息をつくと、大学の研究室にランチを届けに来ていた友美にいきなり背中を叩かれた。

「痛っ。何するの?」
「いつまで落ち込んでいるの! ぐずぐずと悩んでいないで、気になるならボディーガード君に連絡すればいいでしょう?」

腕を組んで仁王立ちになる友美が赤鬼に見える。

「もうボディーガードじゃないもん。私のボディーガードは終わりにするって書いてあったもん」

友美が私を見てハッキリと「ウザッ」と言った。

「ウザって何よ。落ち込んでいるんだから励ましてよ」
「いつまでそんな甘えた事言ってるの! 34の女がウジウジしない! 目障りだから」

容赦ない言葉がちくちくと胸に刺さる。

「だって、連絡して迷惑がられたら落ち込むし」
「じゃあ、ボディーガード君と二度と会えなくなってもいいのね?」

えっ……。
二度と会えなくなる……。

「いやだ!」
「だったら行動する!」

友美が充電中だった私のスマホを掴んで、こっちに向ける。

「ボディーガード君に言いたい事あるでしょ。ちゃんと言いなよ」

三田村君に言いたい事……。
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