私のボディーガード君
 この男は誰?

 ベッドから起き上がり、まじまじと男を見る。面識のない男だ。どこで会ったの?
 あっ、私、服……大丈夫だ。昨夜のワンピース着たままだ。

 ほっと息をつくと、「おはようございます」という低い声が聞こえて、心臓が縮んだ。
 ベッドの下の男が起きた。

 のっそりと起き上がった男がこっちを見て微笑んだ。
 朝陽に照らされた目鼻立ちの整った男の顔にドキッとする。

 色白の卵型の輪郭はなんて小顔なんだろう。
 それに若そう。多分、二十代ぐらい。

 思わず男の綺麗な顔にぽっと見惚れてしまう。

 いや、見惚れている場合ではない。知らない男が私の部屋にいる! これは緊急事態! 今すぐ男と距離を取らなければ。

「あ、あなた誰なんですか? 警察呼びますよ」

 ベッドの上のスマホを掴んで逃げるように部屋の隅に駆けた。

「酷いな。帰らないで、そばにいてって俺の手を握って放さなかったくせに」

 ありえない! 酔っていても、男性に触られると鳥肌が立って吐き気をもよおすんだから。

「嘘よ!」
「嘘じゃないですよ」

 男が不機嫌そうな表情を浮かべ、立ち上がって近づいてくる。
 コート越しでも引き締まった体型である事が何となくわかる。
 背も高くてモデルみたい。

 多分、私以外の女性なら、男のカッコよさにドキドキしてときめく状況かもしれない。でも、私は恐怖しかない。
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