私のボディーガード君
 思えば34歳になってからいい事がない。浅羽に別れて欲しいと言われるし、クリスマスディナーの席を浅羽に奪われるし、知らない男に襲われかかるし、挙句、命まで狙われるなんて……。

 運が悪すぎない?
 友美に話したら絶対に爆笑するレベルだよ。

 今夜は一人でもクリスマスイブを楽しんでやるつもりだったのにな。全然面白くない。
 こういう時は飲むしかない。

「三田村さーん、ハイボール頼んで」

 私との間に1メートル間を空けてソファの端に座る三田村さんが端正な顔を心配そうに歪めて、こっちを見る。

「お嬢様、もうそのへんで」
「お嬢様って呼ばないでって、何回言わせるの? 今度呼んだら殴るからね」

 あーもう、腹が立つ。お酒ぐらい好きに飲ませてよ。
 行きつけの「カラオケ紫式部」に来たんだからさ。

 じっと三田村さんを見ていると、渋々という様子で立ち上がって、カラオケルームの壁にかかる電話でハイボールとジンジャーエールを頼んでくれた。

「三田村さん、ありがとう」
「これで最後ですよ」

 ソファの端に座ってこっちを見る三田村さんが釘さすように言ったけど、最後にする気はない。
 こんな酷い夜は飲まなきゃやってられない。

「私って、可愛げがないのかな」

 ふと、浅羽と一緒だった若い女の子が頭に過った。
 思い出したらムカッとした。
< 43 / 210 >

この作品をシェア

pagetop