私のボディーガード君
緊張し過ぎて急に怖くなって来た。
男性の手に触れる事は清水の舞台から飛び降りるぐらい勇気がいる。

思い切って飛び降りるのよ。

でも、触れた途端、背筋がゾーッとする嫌な感じになったら?
そうなったら三田村君に対して怖いと思うようになるかも。

爪先がくっつきそうな距離まで近づけたけど、手を触れた後は近づけなくなるかも。

やっぱり怖い。

「妃奈子さん、無理をしなくていいですよ」

三田村君が急に右手を引っ込めた。

「すみません。調子に乗って、無謀な事を言ってしまいました」
「三田村君、ごめんなさい。急に怖くなってしまって」
「自分を責めないで。怖くて当然です。苦手な事に立ち向かったんですから。妃奈子さんは勇気がある人です。私と爪先がくっつきそうな距離まで近づいてくれました。かなりの勇気を振り絞ってくれたのでしょう?」

胸がキュンとした。
まさか肯定的に言ってもらえるとは思わなかった。

「三田村君は大丈夫な気がしたから。でも、触るのは」
「いいんですよ。無理はしないで下さい。警護でどうしても必要な時以外は妃奈子さんに触れませんから安心して下さい」

昨夜も思ったけど、三田村君は安心感をくれる人だ。
だから、一緒にいても大丈夫なのかな。

「あっ、妃奈子さん、9時ですよ」
三田村君が腕時計を見た。

え! 9時! 一限が始まる!
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