私のボディーガード君
「皆さん! 騒がしいですよ!」

私の声に学生たちがこっちを見る。

「その方を解放して下さい。彼は私の……」

ボディーガードなんて言ったら、またキャーキャー騒ぐかも。

「もしかして佐伯先生の恋人ですか」
三田村君を囲っていた学生の一人が言った。

恋人って言葉に笑ってしまう。
この年頃の子たちはどうしてすぐ色恋につなげるのか。

「違います。彼は私の」
「私は佐伯先生の秘書です!!」

私の言葉と重なるように三田村君の低い声が大きく廊下に響いた。
三田村君の大声に驚いたのか、学生たちが静かになった。

「皆さん、佐伯先生の所に行かせて下さい」

三田村君が強めに言うと、学生たちがようやく、三田村君に道を開けた。

こちらに向かって歩いてくる三田村君と視線が合った瞬間、三田村君の方から気まずそうに視線を逸らした。

よく見ると三田村君の頬がほんのり赤いような。
学生たちに囲まれて恥ずかしかったのかな?

「佐伯先生、お騒がせしてすみません。行きましょう」
「ええ」

三田村君に促されてその場を後にした。
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