私のボディーガード君
「三田村君のおばあちゃんのお墓があるんだっけ?」
昨日、来る時に車の中で教えてもらった。

「母の実家がこの町なんです。子どもの頃は夏休みになると、毎年遊びに来ていました。太陽が近くて、じりじりと暑いんですよ。海に入る時は素肌だと焼け過ぎてしまって、海パンの上にTシャツを必ず着て入りました」

「千葉県の最南端だものね。東京よりも太陽が近そうな気がする。今もお母さんの実家はどなたかがいらっしゃるの?」

「叔父夫婦が暮らしています。叔父は柔道家で、柔道は叔父に教わりました。オリンピックの代表選手になった程なので、滅茶苦茶強いんですよ。子ども相手に容赦ないし、組んだ瞬間にいつも投げ飛ばされて、それが悔しくて」

「最初から三田村君は強いのかと思った」
「子どもの頃はひ弱でしたよ。だから強くなりたかった」
「凄いよね。SPにまでなるんだもの。でも、どうして……」

どうしてSPを辞めて議員秘書に?

という言葉を飲み込んだ。

SPを辞めるって、きっと相当な事があったはずだ。もしかしたら三田村君の心の傷になっていて、あまり言いたくない事かもしれない。

友人でも恋人でもない私にそこまでの事を聞く資格はない。

「ごめん。何でもない。そろそろ降りよう」
「階段、気をつけて下さいね。急になっていますから」
「うん。気をつける」
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