私のボディーガード君
「妃奈子さん、妃奈子さん」

三田村君の声が聞える。

「妃奈子さん、苦しいんですか?」

目を開けるとすぐそばに三田村君の顔があった。
心配そうに眉を顰めていた。

「みっくん」
「えっ」
三田村君の眉が驚いたように上がった。

「ごめん。夢を見ていて」
喉が凄く渇く。体も熱い。

「三田村君、お水もらえる?」
「どうぞ」と言って、三田村君がミネラルウォーターのペットボトルを開けてくれた。

ベッドからゆっくりと起き上がって、ゴクッと水を飲んだ。
水が気持ちいい。

ぼんやりしていた頭がハッキリしてくる。

あれ? なんで三田村君がいるの?
ここはホテルの部屋だよ。勝手に入って来たの?

「三田村君、どうして私の部屋にいるの? 私、三田村君を部屋に入れた記憶ないんだけど」

ペットボトルを握りしめながら、じっと三田村君を見ると、気まずそうな表情を浮かべた。

「すみません。妃奈子さんの返事がなかったので入らせてもらいました。実は私の部屋と妃奈子さんの部屋、続き部屋になっていまして、中でつながっているんです」

えっ……。

「私、聞いてないけど」
「妃奈子さんに余計な心配をかけたくなかったので、言っていませんでした。使う予定もなかったですし」
「入って来たじゃない」
「緊急事態だったので」
「アプリで私の位置がわかるんだから、入って来なくてもいいのに」
「確かに位置はわかりますが、それだけでは生存が確認できないので」

生存って言葉に背中が冷たくなる。

「ここは安全な場所だって言ったじゃない。そうじゃないの?」
「安全な場所ですよ。ですが、どんな場合も安否確認をする事は必要な事ですから」

正論だけど、納得できない。

三田村君の部屋と繋がっていた事を隠されていたのも腹が立つ。心の準備ってものが必要だってわからないのかしら。
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