私のボディーガード君
「もし、私が長いお風呂に入っていて、連絡できなかったら、そういう時も入ってくるの? バスルームまで私を捜しに来るの?」

「必要だと思った時はそうします。強引にバスルームに入る事は出来ればしたくないので、今からお風呂に入るとご一報いただけると助かります。お休みになる時も連絡を下さい」

なんか三田村君に監視されているみたいで面白くない。
必要な事だってわかっているけど、そこまで連絡しなきゃいけないなんて息苦しい。

ベッドに横になって、三田村君に背中を向けた。
今は三田村君の顔を見たくない。

「妃奈子さん、お腹すきませんか?」
言われてみれば空腹だ。さっきシーフードカレーを食べたばかりなのに。

「何時なの?」
「夜の9時です」

最後に時間を確認したのは午後3時だった。
6時間分の記憶がない。

「もう、そんな時間なの?」

驚いて三田村君の方を見ると、口の端をあげて弱々しく笑った。

「妃奈子さん、熱を出してお休みになっていたんです」
「熱……」
そういえば頭が痛いし、怠い。

「お粥を作ってもらいますね」
三田村君がベッドの側の電話を取って、フロントにかける。

「ルームサービスをお願いできますか? はい。それでお粥を作って頂きたいのですが。はい。ありがとうございまます。では、失礼します」

電話を置くと三田村君が「お粥作ってくれるそうです」と微笑んだ。
三田村君に腹が立っているのに、微笑んだ三田村君が輝いて見える。
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