夏恋サテライト
「棗も今日気合い入れた?」
「ふつう」
「そっかそっか、元々ビジュカンストしてたんだった…」
「何語?」
そんなこんなで私が鼻血に耐えながら目指すは映画館。
もちろん棗のほうから手を繋いでくれて隣に並んで歩く。
繁華街まで来ればすれ違う女の子みんな棗を見て、頬を染めて、それから隣にいる私を見てなんだとため息をつく。
そうだよ、彼女いますよ隣に。
こんなちんちくりんですが彼女やらせてもろてますよ。
「おーまいがー…」
映画の前にお手洗いに行って、戻ってきたら棗の前に女の人。
大学生か社会人か、とても大人っぽい巻き髪のお姉様がそこにいた。
そう、絶対にナンパである。
その女の人の背後3m、棗からはちょうど被って見えない場所で立ち止まる。
声かけるべき?
この人私の彼氏なんでー!って?
こんな芋臭いガキがって思われない?いや思われるよな
棗のビジュアルに釣り合ってるとはとてもじゃないけど思えない。
どうしようか、いっそあの人がいなくなるまで隠れてようかと思った時。