夏恋サテライト
「…すいません、彼女いるんでどいてもらっていいですか」
「「…え」」
女の人と私の声がぴたりとハモった瞬間だった。
そしてその空間一帯の時が止まったようで
石化した女の人をすっと避けて後ろにいた私を迎えに来る。
そして思考停止した私のアホズラを見て笑う。
「いこ」
挙句の果てに微笑みながら手を差し伸べてくるからもうキャパオーバー。
「はぇ…」
「アホズラやめて」
棗の大きな手に両頬をはさまれるも、私の脳内は彼女いるんで発言で活動を停止してしまったようだった。
彼女いるんで、だって。
座っていた棗からじゃ、女の人に被って私の姿は見えてないと思ってたのに。
ああどうしてこの人は私が一番欲しい言葉をくれるんだろう。