夏恋サテライト

「なんなのいきなり…!手首痛いし、歩くの早いし、私の方一切見ないし」




大好きな棗にこんな口聞く日が来ると思わなかった。





私の口は棗に愛を囁くためにあると思っていたのに

他の子…夏川さんの顔が、棗に微笑む笑顔が浮かぶ度に酷く胸が痛む




「咲鈴…?」




久しぶりに棗が私の名を呼んだ気がする


ただでさえいつもおいとか、なあとかしか呼ばない棗のその声で名前を呼ばれると胸がギュッてなるんだ。




「…悪い、ぼーっとしてた」




痛かった?なんて手首を優しく撫でる棗。


赤くなってるわけでもなければ、別にもう痛くもないのに


久しぶりに棗が私を見てくれたようで、それだけで胸がいっぱいだ。




「…咲鈴?」



「……棗のばか」



「……なに、泣いてんの?」




ギュッと下唇を噛めば少し鉄の味。



そんな私の行動を辞めさせるかのように棗の指が優しく唇に触れる。




その行動さえも愛おしくて、苦しくて、目から熱いものが溢れてしまう。




泣きたくないのに。めんどくさいと思われたくないのに。




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