夏恋サテライト
「あいつの家庭複雑で、幼い頃からシングルファザーの父親に虐待受けてたらしくて。
父親は夏川の顔が男作って逃げた母親に似てるからって毎日暴行してて。一度だけ顔にあざ作って学校来て騒ぎになったことがある」
好奇の目で見られて先生からも変に気を使われて
夏川さんはあまり学校には来なくなった。
でも学校に行ってないことが父親にバレてしまって、また殴られて学校に無理やり行かされて。
彼女は冷たいんじゃない、クールなんじゃなくて、心が壊れてしまっていたんだ。
中学生ながらに棗はそれを理解した。
「隣の席だったからたまたま目が合って、ついどうしたんだよって聞いちゃったんだよ。そしたらあいつ、殴られた傷指さして “ 勲章 ” って笑って言った。笑ってるのを見たのは初めてだった。」
もちろん心からの楽しい笑顔ではなく、壊れてしまった彼女なりの強がりだったと思う。
棗はそう言った。
それから棗の夏川さんはだんだんと仲良くなって
お互いが似ていることに気づいて惹かれあって
中学三年生にして恋に落ちた。
お互い、たぶん初恋だった。