夏恋サテライト


「…出ていいよ、急用かもしれないじゃん」


「…は」




自分の口から出たのは想像以上に低い声、冷たい言葉だった。


涙もすっかり乾いてしまった。




それに驚いたのは私だけじゃなく、もちろん棗も。



可愛い女の子だったらきっと、ここで泣きながら出ないでって言うのかな。




でも私はこの感情をぶつける場所を探すことで精一杯だった。


もう疲れてしまったのかもしれない。




電話に出るのか、出ないのか。


棗を試しているような自分にも嫌気がさした。





「…何」





棗は電話に出た。


あぁ、出るんだ。なんて



自分が出なよって言ったくせにいざ目の前で夏川さんと電話してると思うと真っ黒な感情がとめどなく溢れてくる。




最低だ、私


自分勝手でわがままで強がりで、こんな自分嫌になる。




棗と付き合ってから、自分の嫌なところを知ってばかりだ。




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