夏恋サテライト
「――咲鈴?」
地元に差し掛かった頃、聞き覚えのある声が耳をかすめる。
今日は厄日かもしれない
どうしてこうも全てがタイミング悪く重なってしまうんだろう。
「…恭、ちゃん」
「…なに、そのひでえ顔」
コンビニのビニール袋を片手に私服で歩いてきたのは恭ちゃんだった。
正直、今は誰にも会いたくなかったのに。
地元が近づいてきて涙は気合いで引っ込めた
でも真っ赤に充血して泣き腫らした目も、びしょびしょに濡らしたハンカチも隠せていなくて
目を合わせた数秒で恭ちゃんは一気に眉根を寄せて不機嫌な顔へと変貌を遂げた。
「…お前はいつになったら幸せになってくれんだよ」
「…え?」
「そんなに泣いて、辛い思いしてまであいつがいいの?」
恭ちゃんはコンビニ袋から出した炭酸飲料のペットボトルを私の目元に押し当てる。
腫れた目にはぴったりだったけど、恭ちゃんがどんな表情をしているのかは見えなくて
ただその声が切なそうな感じがして、なぜかまた胸が痛むんだ。