夏恋サテライト

「棗に……距離置きたいって言ってきた。私棗に…棗に酷いこと言って…っ」



「…うん」



「夏川さんには棗しかいないって、頭ではわかってるのに…なんで棗なのって、なんで拒まないのって思っちゃうのがやで…っ」




恭ちゃんに事情を話そうにも、先程気合いで引っ込めただけの涙腺は簡単に崩壊してしまう。




その涙を恭ちゃんは棗のように指ですくってくれて


そんな行動からも棗を感じてしまって私の感情の暴走を加速させる。




「…やめなよ、あんなやつ」





恭ちゃんの言葉に首を横に振る


掴まれた右手首に力が入ってるのを感じて、恭ちゃんが私を本気で心配してくれるんだって伝わってくる。




「お前が幸せならそれでいいって、やっと最近思えてきてたのにさ。最低だなまじで」


「恭、ちゃん…？」




恭ちゃんの右手が手首からゆっくり上がってきて


そのまま私の頬を包む。



優しく撫でるようなその手つきはまるで壊れ物をそっと触れるようだった。