夏恋サテライト
「俺にしなよ、咲鈴」
「……え」
通り過ぎる車の走行音も、近くのコンビニの自動ドアの入店音も、全てが一瞬聞こえなくなって
ただの無音の空間に恭ちゃんの声だけがクリアに聞こえた
俺にしなよ
たしかに、そう言った。
それを証明するかのように恭ちゃんの頬は少し赤く染って見える。
夕日のせいか、なんのせいか
きっと前者ではないと肌で感じた。
「言うつもり無かったけど、俺あいつよりずっと前から…咲鈴があいつを好きになる前からずっと好きだったよ」
「…恭、ちゃ…」
頭が真っ白になる。
恭ちゃんの発する言葉全てがぐるぐると回って、消えて、また浮かんで。
さっきまでのことも含めてもう脳みそがキャパオーバーだと悲鳴をあげている
「言うつもり無かったけど、あいつがお前を泣かせるなら…その程度なら、俺は容赦なく奪いに行くよ」
「…どういうこと、」
「そのままの意味。飛鷹棗から奪うから。もうあいつのために泣くのやめろよ」