夏恋サテライト
授業が終わって1歩教室から出れば
「…あ」
ほら、不運。
「えー、学校やめたのかと思ってた」
「…棗以外には相当性格悪いですね、夏川芽心さん」
言葉を交わしたのははじめてだった。
前にトイレで話しかけられた時は私はぐうの音も出なかったから。
でも今は何故か、驚く程に冷静に彼女と会話ができている。
廊下に1歩出ただけで遭遇してしまう自分の悪運は少しばかり…いや、だいぶ恨んでいるけども。
「別れてくれたんでしょ?アリガト」
「……別れてません。誰から聞いたんですか」
「棗からだよ」
ズキッ…
たった一言で息が出来なくなった。
心臓を握られたように胸が苦しくて、視界がぐらりと歪んだ気がする。
せっかく3日ぶりに学校に行く気になったと言うのに、やっぱり今日も休めばよかったな。