夏恋サテライト


「棗…っ!見てたでしょ!?この子今私の事叩こうとして」

「その前からずっと見てたし、聞いてたけど。どう考えてもお前が煽ったのが悪いだろ」




棗の冷たい声に夏川さんはグッと言葉を飲み込んで押し黙った。




さっきまでの威勢はどこかへ消え、蛇に睨まれた蛙のごとく気まずそうに私とも棗とも目を合わせようとしない。




やっぱり私、この子好きになれない。…ううん、嫌いだ。




「何騒いでんだお前ら!飛鷹と…夏川か?お前ら職員室来い!」


「ちがっ…!」



「いいから。後でまた来る。……いくぞ」




またしてもタイミング悪く先生が現れたかと思えば、棗と夏川さんのケンカと勘違いして2人だけ連れていかれる。




棗は私が先生から見えないようにグッと背中の後ろに隠して離してくれなかった。




夏川さんは棗に睨みつけられて不服そうに、一瞬私のことをキツく睨んで去っていった。




ぎゅっと握っていた拳を開けばくっきりと赤い爪のあと。


少し切れて血が出てしまっていた。




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