夏恋サテライト

「咲鈴…!」

「おい!」





騒ぎのせいで集まったギャラリーの波をかき分けて現れる美紗と恭ちゃん。



過保護の保護者のような2人の焦り顔を見てなぜか私は笑ってしまったのだ。





「なにわらってんの…!血でてる、保健室いこ」


「平気、これくらい。もう授業はじまるし」


「舞川は先戻ってろ。手当てしてくる」




私の言葉を全て無視するかのように腕を引いて歩き出す恭ちゃん。


その足はどうやら保健室に向かっているようだ。





「いいよ保健室は…!というか恭ちゃん何怒ってるの」



「…別に、むかついただけ」



「え?」



「お前を傷つけて、1人で泣かせた男が一丁前にかっこつけて助けてんの、ムカつくだろ普通」





恭ちゃんも助けに来ていた。


でも一足早く棗が止めに入っていたらしい。




「座って、ここ。で手開いて」


「だからいいって…いたたたた!!!!」


「うるさい」


「染みるって、恭ちゃん痛いってば…!!」





私の手を開かせて容赦なく消毒液をぶっかけてくる恭ちゃん。



消毒目的半分、ストレス解消半分にも思えてしまう。




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