夏恋サテライト
「言葉足らずでごめん。でも俺もうお前がいない生活考えられない。手放せない。距離置くのももう限界」
「…棗、ごめん…っ」
私の涙が落ち着くまで棗はベッドに腰掛けてずっと抱きしめて背中をさすってくれていた。
「あのあと…柏崎から聞いたかもしれないど、俺あいつと縁切った。もう助けてやれないって。最低だと思うけど咲鈴の方が大事だからって言った」
夏川さんは泣いてすがった。
私には棗しかいないのにって、あの子には他にもたくさんいるのにって。
棗じゃなくたって大丈夫な子なのにって。
それを棗は真っ向から否定した。
私に棗が必要という意味ではなく
私が棗にすがってるんじゃなくて、依存してるんじゃなくて、自分が一緒にいたいからいるだけだと。
あとから聞いた話では、あの時電話で言っていた父親の出所も、家の前にいると言うのも全部嘘だった。
棗に来て欲しくて、私から奪いたくて、夏川さんがついた嘘。
彼女が棗に依存していることは分かっていたつもりだった。
でも私が思うよりも何倍も、何十倍も夏川さんの依存心は強かったみたいだった。