夏恋サテライト
「あいつ、学校辞めるって。あの時俺が家に向かいながら警察呼んだことがきっかけで夏川の親戚の耳にも入ったらしくて、田舎に引き取られるらしい。心療内科に通いながら生活することになるって」
夏川さんのこころは決して強くなかった。
いつも気性が荒く見えたのも、基準量よりはるかに摂取していた睡眠剤の影響。
棗がずっと感じていた違和感も、中学生の頃と人格がまるで別人になってしまっていることだったらしい。
1人で、苦しんで戦っていたんだ。
彼女がやった事を全部許せるかと言われたらもちろん無理だけど、胸は痛む。
同情なんか求めていないと思うし、私も同情なんてしたくない。
だからもう、お互い終わりにしよう。
きっともう、会うことはないと思う。
「咲鈴に伝えてほしいって」
「…なにを?」
「ごめんなさいって。全部八つ当たりだったって。幸せそうな咲鈴が、許せなかったとか言ってた。許される話では無いけどな」
夏川さんに手をあげかけたこと、私は謝れなかった。
連絡先も持ってないし、棗のスマホを使って連絡したらとても最低な女だと思うのでこのままにするしかない。
確かに酷い人だと思ったけど、殴りかかる私に怯えていたあの表情は決して嘘じゃないと思ったから。
いつか、またどこかで会えたら謝れるだろうか。