夏恋サテライト

「……なに」



「ん〜?ふふ、幸せだなって思って。好きだよ棗、だいすき」


「……ばか」





棗の大きな手が私の目を覆い視界を遮られた。



指と指の間から少しだけ見える棗の頬が赤く染っているだけで私は大満足だ。





棗は愛情表現が苦手な上に、私からの愛情表現にも弱いらしい。


そんなところが可愛いなんて言ったら口を塞がれたのは言うまでもない。




「もう夏終わっちゃうね」


「やっと終わる。暑いからもういい」


「えぇ〜私たちの季節が終わっちゃうのに」




ナツメ咲鈴に飛鷹ナツメ。



私たち2人に共通する大切な名前。




そして棗との関係が一気に進展した今年の夏、終わらないで欲しいと願っても無惨にすぎていくのが季節というものらしい。





夏休みが終わって夏の花たちも枯れていく。


季節の終わりをこんなふうにしみじみと感じるのは人生初めてかもしれない。





「俺は夏って漢字入ってないけど」



「え?でも棗って夏の植物だよ」



「…そんなことまで知ってんのな。」



「棗の花言葉のひとつにね、英俊っていう言葉があるんだけど。“ 多くの人より特に優れている人 ” って意味なの。棗にぴったり」





顔も性格も頭脳も運動も、なんだって人より優れている。


でもそれをひけらかさないのが棗のいいところ。




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