夏恋サテライト
「……幸せをもたらす花」
「え?」
「咲鈴の由来の…鈴蘭」
私の髪をひと束すくって優しく撫でる棗。
ゆっくりと視線を移せば、見たこともないくらい優しい目をした棗と目が合った。
「…覚えてたの?」
前に一度、そんな話をしたことがあった気がする。
私の名前は咲く鈴蘭から来ていること。
鈴蘭は幸せをもたらす花って言われてるんだよってこと。
1年以上前、まだ棗が私に毛ほどの興味もなかったであろう頃言った話だった。
「お前にピッタリだなって思ったから」
「……っ」
「ふっ、何泣きそうな顔してんの」
「なづめぇ〜すぎぃ〜!!」
「鼻水つけんなよ」
今年の夏は、一生に一度の夏。
もちろん毎年一生に一度だけど、今年は特別なんだ。
棗との距離がグッと近づいて、初めて本気ですれ違ってたくさん泣いて、でもその何倍もたくさん笑った。
きっとこれからも、一生忘れない夏。
「来年も再来年も、夏は棗と一緒にいたい」
「…夏だけ?」
「全部っ!!!」
satellite[サテライト]
意味:衛星、本体から離れて存在するもの
私は棗の衛星。
これからの夏も、もちろん夏以外の季節いつだって私は棗の隣に一緒にいる。
どんだけウザがられたってもう怖くはないんだからね
「棗だいすき」
「……俺も」
夏恋サテライト
fin.