夏恋サテライト

「失礼しまーす。棗、いる?」




先生不在と書かれた保健室の扉を開けるとツンと保健室の匂い。



苦手なんだよね、この匂い。


鼻をふさいで棗がいるであろう奥へと進む。




「なづめ〜」





一つだけカーテンの閉まっていたベッドの足元には見慣れたシューズ。



1度もかかとを踏んで歩いたことがないであろう綺麗なそれは見覚えがある。




「みっけ」





カーテンを開けるとそこには眠り姫ならぬ眠り王子。


彫刻のような美しい顔で眠りにつく棗がいた。




「棗起きて、放課後だよ帰ろうよ〜」


「…」




びくともしないな、このやろう。




「…起きない眠り姫にはちゅーしちゃうぞ」




綺麗な顔を見ていた私は吸い込まれるようにベッドに腰掛ける。




キスしたら、棗はどんな反応するかな。


たぶん…いや絶対に全力で拒否られて気持ち悪がられて嫌われるだろうな。




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