夏恋サテライト
近づいてきていた気配が止まったのを気づいて薄目を開ける。
「……すれば?できるもんなら」
「うわあぁ」
急に目を開けたからか咲鈴はのけぞってバランスを崩した。
「…あぶな」
寝起きでよく反応できた。自分を褒めよう。
倒れかけた咲鈴を掴み、そのまま軽く抱き寄せる。
この程度じゃこの鈍感女は気づきやしない。
「棗寝ぼけてる」
「どこが。なんかお前顔赤」
「くない!!走ってきたから暑いだけ!!」
頑なに否定するからどんだけ俺に会いたかったんだよ、なんてキャラじゃないセリフがつい漏れる。
これを否定しないのはこの女の悪いところ。
「昼一緒にいた男」
「恭ちゃん?隣の席の中村恭平」
「知ってる」
「え?」
このクソ鈍感女、なんて暴言は心に留めて代わりに軽く睨んでやった。
案の定本人はぽかんとしてる。