夏恋サテライト
「わっ」
「何フラフラ歩いてんの」
学校に向けて歩いていた腕を掴まれ、脱力した私の体はその人の胸に収まる。
この声、この辛辣さ…
「なつ、め」
「は、顔赤」
フラフラ歩いてるうちに通学路に合流していたらしく、運良く…ううん、今だけ運悪い。
棗に遭遇してしまった。
こんなの、熱だってバレたら連れ戻され…
「っ、おい」
急にクラっと視界が歪んで力が抜ける。
そんな私を棗はがしっと支えてくれたらしい。
はは、王子様だぁ。ほんものの。
揺れる視界にぼやけて映る棗がキラキラした王子様の服を着ているように見える。
背中にひらひらとマントがなびいているような…