夏恋サテライト
「…バカ、何泣きそうな顔してんの。これ柏崎のだけど」
「ほえ…?」
「涙まであつ…」
私の目から溢れかけた涙を指ですくう棗。
その顔は呆れつつ半笑いだった。
「柏崎くんの…?ほんと?」
「そんな嘘つかないだろ。あいつがこないだ置いてっただけ」
「なんだぁ…」
安心と早とちりした恥ずかしさと安心で目に溜まっていた涙が一筋こぼれる。
そんな様子を見て棗がまた拭ってくれる。
「……悪魔」
「え?なんて?」
悪魔って言われた?私のこと?
棗は相も変わらず仏頂面で感情なんか読み取れない。
わたしが空想上の女の子にヤキモチ妬いてたことだってきっと気づいてないんだろうな。
「棗のばか」
「は?」
「にぶにぶ棗」
「どの口が言ってんの。てかいつも以上に頭おかしくなってんじゃないの。寝れば」
顔にかかっていた髪の毛を優しく払われて、それが頭を撫でられているようで気持ちよくて。
ずっとこのまま、時間なんか止まっちゃえばいいのに。
お兄ちゃんずっとバイト終わらなきゃいいのに。
なんて願いながら目をつむった。