夏恋サテライト
「棗?寝てた?」
「ん…」
薄く目があいて、大きな黒目と目が合う。
寝起きで少し涙ぐんだ瞳からは目が逸らせなかった。
「お、はよ、う…」
「…遅い」
「え?」
「来るの、遅い」
棗のセリフに心臓がドキドキ動きを早めた。
遅いって、え?
棗が私のことを待っていたみたいな。
そんなわけ、ないのに…
「棗、来ないと思ってた…」
「…まあ、出席日数」
「行事嫌いなのにね」
「担任にも釘刺されたから」
さすがに2年連続サボりは許されないか…
「あ、そろそろ援団の招集かかるから着替えてくるね」
せっかく会えたのに、もう行かなきゃなんて名残惜しい。
でもチアやるって決めたのは私だし…
本当は、棗に見てて欲しくてやるんだけど。
「なに?」
じっと見つめていたら上体を起こした棗と目が合った。
「…チア、見に来て欲しい、です」
「…は」
棗の為にやるんだ。棗が見に来てくれなきゃ意味ないんだよ。
「……気が向いたら、な」