夏恋サテライト
――――


「咲鈴ー!お疲れ様っ!超超可愛かったよ~!」



「ありがとう美紗、それより棗っ…いた?」




チアといってもほぼ全員素人なので簡単なダンスを1曲披露して終わり。


私は終わった瞬間に客席に走って棗を探した。




「いたよ、飛鷹くん」


「えっ…」



「たしかすぐそこに……あ」




美紗が指さした後ろを向こうとした時だった。




「こいつ、貸して」

「わっ…」




突然布のようなものをバサッと頭からかけられて前が見えない。



でも分かるよ、いつからストーカーやってると思ってるの。


この声も、この匂いも、私の腕を少し強い力で引く手も、全部知ってる。




「着ろそれ。そのまま。」


「棗、なんで」



「見にこいっていったのはお前だろ」




さっき会った裏庭まで連れてこられて、棗は不機嫌そうにベンチに座る。




頭からかけられた布はやっぱり棗のジャージだったらしい。


暑いからやだよ、と言ったけど睨まれたから仕方なく着ることにした。




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