夏恋サテライト
「腕も足も腹も出しすぎじゃないの」
「チアってそういうもんだよ?」
「お前腹すぐ冷やすくせに」
「この暑さじゃさすがに絶対冷えないよ…」
棗の隣に腰かければ、なんか変な感じがした。
ジャージ姿の棗の隣に、チア服の上に棗のジャージを羽織った自分。
体育祭の賑やかな雰囲気からは切り離された別の空間にいるようで。
このまま、ずっと二人きりでいれればいいのに…
「棗は何も出ないの?」
「最後の色別全員リレー」
「ふふ、棗らしいね」
個人種目に出るわけがないとは思ってた。
棗が全力で障害物競走とかしてたら面白すぎるもん。
ちょっと見たい気持ちもあるけど。
「借り物競争、招集かかってるけど」
「あー…うん、もうちょっとしたら行こうかな」
遠くで借り物競争出場者を呼ぶ声。
棗に聞こえてなきゃいいのにって思ってたけど、聞こえてた。
でもこの空気が、空間が離れがたくて。
棗の隣にいたくて、つい聞こえないふりをしようとしてしまう。