夏恋サテライト
「位置について、よーい!」
パンッ!!
「…っ、!」
お題の封筒まで走って、6人中3着で封筒を開ける。
そこに書いてあったのは――
「…っ、棗!」
赤団のギャラリースペースまで走って、2年生の群れに棗を探す。
いない、どこにも…
やっぱりまだ裏庭にいて見に来てくれなかったのかな…
「棗…!」
「咲鈴」
凛とした声が、歓声の中でやけに響いて聞こえた。
そして次の瞬間には、さっきみたいに腕を引かれるまま走っていたんだ。
「棗…っ、」
前を走る棗は全力で、私の顔なんか一切見ずにゴールテープを切った。
『私は棗の本気がみたい!』
半分諦めていた目標を、まさかこんな形で叶えられてしまうなんて。