夏恋サテライト

「位置について、よーい!」




パンッ!!




「…っ、!」





お題の封筒まで走って、6人中3着で封筒を開ける。

そこに書いてあったのは――




「…っ、棗!」





赤団のギャラリースペースまで走って、2年生の群れに棗を探す。




いない、どこにも…


やっぱりまだ裏庭にいて見に来てくれなかったのかな…




「棗…!」

「咲鈴」





凛とした声が、歓声の中でやけに響いて聞こえた。


そして次の瞬間には、さっきみたいに腕を引かれるまま走っていたんだ。




「棗…っ、」




前を走る棗は全力で、私の顔なんか一切見ずにゴールテープを切った。




『私は棗の本気がみたい!』



半分諦めていた目標を、まさかこんな形で叶えられてしまうなんて。




< 65 / 201 >

この作品をシェア

pagetop