夏恋サテライト
「涙、止まったの」
「……な、んで」
「俺にも限界があるんだよ、毎日毎日容赦なく煽りやがって」
私の鼻を指でぎゅっとつまむ棗はどこか楽しそうだった。
何が何だか理解できない私を置き去りに。
「なんでキスするの…」
「鈍すぎて尊敬する、その精神」
「私の事好きじゃないんじゃないの…!」
「誰がいつそんなこと言った」
思い返せば、好きと言ってフラれたことはない。
「でも結婚しよって言ってもいつも」
「あんな冗談交じりのお前の告白にマジで返すのもおかしいだろ」
「棗表情読めないもん、私が猛アタックしてもビクともしないし…!」
「なんとも思ってないやつと一緒にいない。看病もキスもしない」
ようやく頭が追いついてきて、夢のような状況にオーバーヒートしそう。
棗が私のことを好きだなんて、思ったこともなかった。