夏恋サテライト


本当のところ私は会いたいし声が聞きたいし今すぐ飛びつきたい。


何なら片時たりとも離れたくないよ?





でも今日は美紗ちゃんの日なのです。


美紗ちゃんの日…のはずだったんだけど。






「――このバカ借りていい?」




「どうぞ〜」

「美紗!?ねえ美紗ちゃん!?」





放課後、約束してたはずの美紗はにこやかに私に手を振っている。


これから遊ぶ親友がつれさられているのをにこやかに見送っている。





どうしてだ美紗…!!どうしてだよぉ…!!!





「歩け捨てるぞ」



「なにそれ物理?それとも精神的に捨てられる?」

「うるさい」





声色と態度でわかる。


今までにないくらいブチギレてる。




いつもやる気のないテノールボイスは今日は一段と低くそっけない。


そして私の腕を引いて歩く棗は1度たりとも私の顔を見ようとしない。





教室に来た時からずっとだ。


美紗を見ながら私誘拐の承諾を貰い、他には目もくれず私のことすら見ずに教室から引っ張り出して歩き続けている。




さすがの私も息が詰まるほどの緊張感に手が震えそうだった。




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