夏恋サテライト
「ねえ棗怒らないで」
「別に怒ってないけど」
「うそつけぇ…!」
サラサラ前髪の隙間から除くおでこには漫画のような怒マークが見える。
「咲鈴!」
後ろから私を呼ぶ声に棗はピタリと足を止めた。
振り向けば、そこにはカバンを持って走ってきたのか息を切らした恭ちゃんがいたのだ。
「恭ちゃん?どうしたの…って、それ私の!?忘れてた!!」
「…誘拐されてカバン置いてったから追いかけて来いって舞川が。1つ貸しな?」
「ありがとうありがとう今度なんか奢るぅぅ」
カバンを受け取ろうと進行方向と逆に身体を動かす。
…つもりが、腕を掴む棗の力が強くて恭ちゃんの方に歩みを進められなかった。
力、強…