夏恋サテライト
「ニヤニヤすんな」
「えへ〜」
「表情筋緩みすぎ。顔だらしない」
「ひどい」
棗の口の悪さには、実は愛が隠れている。
とんでもなく不器用な男なのでそこはご愛嬌ってやつだろう
「たまには愛を囁いてくれたっていいんだぞ」
「キスで気絶しそうになるやつにはまだ早いな」
「なっ…!!」
いや待てよ?ちょっと想像してみよう。
棗が『咲鈴…好きだよ』なんて言いながら伏し目がちにキスしてきたら…!!
「…鼻血でそう、かも」
「バカ」
「ビジュがやばい、ビジュが」
空想上の迫ってくる棗(?)はどこか艶やかで私をじっと見つめて逸らさない。
心臓が…!やられる…!!
「本人の前で妄想するのやめてもらっていい?」
「むぅ」
棗に頬を挟まれて顔の向きを変えられる
そこに本物が居るものだからついに鼻血が垂れた気がした。
「どこまでもバカ」
「棗…私幸せ」
「あーそう」
こんな幸せが死ぬまで一生続くなんて、私は前世でどれだけの徳を積んだのだろうか。
軽く一国でも救ったかな?なんてね。