驚きやすい春宮くんは,怒らせると色々ヤバい。
驚きやすい春宮くんは,怒らせると色々ヤバい。
うちのイケメンな春宮くんは,とても驚きやすい。
ただ呼んだだけでもとてもびっくりするし,冷たいペットボトルを……なんてもっての他。
だけど,少し遊んじゃうくらいは許される。
「……わっ!!」
「うっ……わ……え?」
「んふふ,ほんとに驚きやすいよね,春宮くんは」
「未菜……今のは誰だって驚くよ」
ほらね,困った顔で,でも許してくれる。
と,直ぐにスマホに向き直ってしまった。
ソファーの後ろに立つ私は,そんな春宮くんの襟足を眺める。
ートントン
「なぁに? 未菜」
「何でもないよ」
ートントン
「ん~? 何でもないんじゃなかったの?」
「何でもないよ,何でもないけどこっち向いて欲しい」
ぷっと拗ねる。
そんなつもりは無かったけど,何となく面白くなくて。
ゆっくり,こっちを向いてくれそうな気配がした。
あっと思い付いた私は,春宮くんが振り向くのに合わせて,彼の唇を狙う。
ーちゅっ
リップ音を小さく立てて離れると,目を丸くした春宮くんがいた。
「……どう? びっくりした?」
「っとに」
ちうっと吸うように,下から唇を奪われる。
この体勢でそんなことが出来るのかと驚いていると,腰をぐっと支えられ,思い切り手を引かれた。
「う,わぁ?!」
身体が猫のようにぐるりとまわる。
私はどこかに座るように着地して,気付けば春宮くんに押し倒されていた。
すっと片足を持ち上げられて,また私は回るのかと身構える。
と,春宮くんはただ私の足を撫でただけだった。
「は,春宮くん……? 今の,ちょっと危な……」
下アングルだろうと,春宮くんはかっこいい。
そんな格好いい顔が,さらにふっと妖しく笑みを作る。
「危ないのは未菜の方……ね」
鼻先にキスを落とされ,私は反射で目を閉じた。
ぱちりと開ける。
そこには,いじわるく,とても楽しそうに笑う春宮くんの顔があった。
かっこ……
思いきる前に,赤面して目を閉じる。
「未菜」
また目を開ける。
すると,今度は唇にキスが落ちた。
「ばーか。驚いた?」
なに今のなに今の顔なに今の!!!!
うちの春宮くんは,とても驚きやすい人。
でも,からかいすぎると,怒らせると,本気にさせると。
色々ヤバい,ひとなのです。
「もう,だめ……かっこいぃぃぃい!!!」
「ふはっ未菜なにそれ」
そうくすくす笑いながら私のおでこを撫でる春宮くんは,スペックもちーと級なのであった。