パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
第一章 変人のストーカーが始まりました
――その瞬間。
私は確かに、死んだなと思いました。


休日なのに少し早く目が覚めたその日、凄ーくいい天気だったので朝食と家事を一通り済ませたあと、散歩に出た。

「気持ちいいー」

青い空に最後の桜が散っていく。
本当はコンペのアイディアを練りたいところだけれど、こんな日に出かけないなんてもったいない。
それに、部屋に閉じこもっておくよりも気分転換になって、いいアイディアが出るかも。

歩道橋に差しかかったら、前をお婆ちゃんが歩いていた。
少し足が悪そうで、ゆっくりと階段を上っていく。
その少し後ろを、私もゆっくり着いていった。
なんで歩道橋って、エスカレーターやエレベーター付きにならないんだろう?
こうやって困っている人がいるのに、不思議だな。
なんてどうでもいいことを考えていたら、お婆ちゃんが最後の一段を踏み外した。

「危ない!」

咄嗟に手が出たけれど、女の私が成人女性ひとりを支えられるわけがない。
今度は私が足を踏み外した。

「うそっ!?」

後ろ向きに自分の身体が落下していくのが、スローモーションのように感じた。
おかげで、お婆ちゃんが手すりに掴まり、驚愕の表情でこちらを見ているのが見える。
まあ、お婆ちゃんが無事ならいいや。
私はこれ、確実に死ぬだろうけど。
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