パーフェクトな警視にごくあま逮捕されました
「だってそうでしょうが!
警視庁内でも駒木警視に勝てる人間なんかいないのに、篠永に怪我させる気ですか!?」
「うっ」
東本くんの言い分は正論だったらしく、駒木さんは声を詰まらせた。
「て、手加減するに決まってるじゃないか」
「手加減、ねぇ。
女性や初心者相手でも容赦ないあなたが、ですか」
「うっ」
駒木さんは東本くんに完全にやり込められている。
それにしても〝女性や初心者にも容赦ない〟って、普段の駒木さんはどれだけ冷徹なんだ?
「まあ、もう何年もやってないんで試合なんて無理ですから、諦めてください」
「……残念だけど、諦めるよ」
ようやく私の手を離した駒木さんはしゅんと萎れている。
それはまるでご主人様に怒られた犬みたいで頭を撫でたくなったが、我慢、我慢。
会社に送ってくれると言ってくれたが、彼らの職場とは逆方向になるので辞退した。
その代わり、タクシーに乗せられる。
「なにかあったらすぐに連絡して。
わかったね?」
「はい」
「ほんとにほんとだよ?」
「はい、わかりました」
駒木さんはタクシーが走りだすまで私を見つめ、ずっと心配してくれた。
こうやって過保護なのが、今は嬉しい。
頑張ろうって気になれる。
「おはようございまーす」